- 2026年7月1日にフリーランス保護新法が完全施行され、業務委託契約の書面明示・60日以内の報酬支払が全企業に義務付けられる
- 受領拒否・報酬減額・買いたたきなどの禁止行為は現場担当者が無意識に行うリスクがあり、社内コンプライアンス研修と相談窓口の整備が急務
- 育児・介護への配慮義務やハラスメント防止措置もフリーランスが対象となるため、既存の社内規程・ポリシーの見直しと契約書テンプレートの整備を今すぐ着手すべき
はじめに|2026年7月1日、何が変わるのか
2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(通称:フリーランス保護新法)は、段階的に規制が強化されており、2026年7月1日をもって全面完全施行を迎えます。
フリーランスや個人事業主に業務を委託している企業にとって、この法律への対応は「任意」ではなく法的義務です。違反した場合は行政指導・勧告・公表・命令の対象となるため、経営リスクとして早急に取り組む必要があります。
本記事では、企業の法務・人事・調達担当者が2026年7月1日までに確認・整備すべき5つの実務チェックポイントをわかりやすく解説します。
フリーランス保護新法とは|法律の基本を押さえる
正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」。個人で働くフリーランス(特定受託事業者)と、業務を発注する企業(特定業務委託事業者)との取引を公正にすることを目的としています。
対象となる「特定受託事業者」とは
法人を設立せず、従業員を雇用していない個人事業主・一人法人が対象です。いわゆるフリーランサー、個人デザイナー、ライター、エンジニア、コンサルタントなどが該当します。
対象となる「特定業務委託事業者」とは
フリーランスに業務委託を行う従業員を雇用している企業・個人事業主が対象です。発注側の規模に関わらず適用されるため、中小企業も例外ではありません。
チェックポイント1|書面・電磁的記録による契約明示義務
フリーランス保護新法では、業務委託の際に取引条件を書面または電磁的方法(メール・クラウドサービス等)で明示することが義務付けられています。
明示が必要な記載事項(主なもの)
- 業務の内容
- 報酬の額
- 支払期日
- 給付を受領する期日・場所・方法
- 委託者の名称・住所・担当者
実務対応のポイント
口頭での発注や曖昧な発注書のみで取引を続けている企業は、標準契約書テンプレートの整備が急務です。既存の業務委託契約書が法律の要件を満たしているか、法務部門または顧問弁護士と連携して見直しを行いましょう。
特に継続的な取引(継続的業務委託)については、更新・解除に関するルールも明確に記載する必要があります。
チェックポイント2|報酬支払期日の厳守(60日以内ルール)
発注者は、フリーランスから成果物を受け取った日から起算して60日以内に報酬を支払わなければなりません。この「60日ルール」は2026年7月1日の完全施行で全取引に適用されます。
注意すべき「受領日」の定義
成果物の受け取り日は、実際に検収・確認を完了した日が基準となります。「月末締め・翌々月末払い」などの慣行的な支払いサイトが60日を超える場合は、取引条件の見直しが必要です。
違反リスク
支払遅延が繰り返された場合、公正取引委員会・厚生労働省による立入検査・勧告・企業名公表の対象となります。サプライヤー管理の観点からも、支払管理システムの設定見直しを早期に進めてください。
チェックポイント3|禁止行為の確認と社内周知
法律では、発注者がフリーランスに対して行ってはならない禁止行為が明確に定められています。下請法と類似しますが、個人事業主が対象となる点が異なります。
主な禁止行為一覧
- 受領拒否:正当な理由なく成果物の受け取りを拒否する
- 報酬の減額:合意なく一方的に報酬を減らす
- 返品:正当な理由なく納品済みの成果物を返品する
- 買いたたき:著しく低い報酬を不当に設定する
- 購入・利用強制:不要な物品・サービスの購入を強要する
- 不当な給付内容の変更・やり直し:費用負担なしに一方的な仕様変更・修正を強いる
実務対応のポイント
これらの禁止行為は、現場の発注担当者が無意識に行っているケースも少なくありません。営業・調達・制作部門など、フリーランスと直接やり取りする担当者への社内コンプライアンス研修の実施が不可欠です。
チェックポイント4|育児・介護への配慮義務
フリーランス保護新法では、継続的業務委託(6か月以上)を行うフリーランスから、育児・介護に関する申し出があった場合、発注者は必要な配慮を行う義務があります。
「配慮」として求められる対応例
- 納期・スケジュールの柔軟な調整の検討
- 業務量・業務内容の一時的な見直し
- オンライン対応・非対面での業務継続の検討
実務対応のポイント
「雇用関係がないから対応不要」という認識は誤りです。法律上、申し出を無視・拒否することは義務違反となります。フリーランスからの申し出を受け付ける窓口・フローの整備と、担当者への周知を行いましょう。
チェックポイント5|ハラスメント対策・相談体制の整備
2026年7月1日の完全施行で特に注目されているのが、ハラスメント対策義務の拡大です。フリーランスに対するハラスメント(セクハラ・パワハラ・マタハラ等)の防止措置を講じることが、発注企業に義務付けられます。
求められる措置の内容
- ハラスメント防止方針の策定・周知
- フリーランスからの相談を受け付ける相談窓口の設置
- 相談者のプライバシー保護と不利益取扱いの禁止
- ハラスメントが発生した際の迅速な事実確認・対処
実務対応のポイント
既存の従業員向けハラスメント相談窓口をフリーランスにも開放する、または別途相談窓口を設けることが現実的な対応です。社内規程・ハラスメントポリシーに「業務委託先個人事業主」を対象として明記することを忘れずに確認してください。
2026年7月1日までに企業が取り組むべき対応ロードマップ
以下のステップで、段階的に対応を進めることを推奨します。
ステップ1|現状の取引実態の棚卸し(即時着手)
自社がフリーランスと締結している業務委託契約の件数・内容・支払条件を一覧化します。特に口頭・メールのみで取引している案件を洗い出すことが最優先です。
ステップ2|契約書・発注書の雛形整備(2〜4か月以内)
法律の明示義務を満たす標準契約書・発注書テンプレートを整備します。法務部門や外部専門家と連携し、既存書類のギャップ分析を行ってください。
ステップ3|支払サイトの見直し(並行して実施)
60日ルールに抵触する取引条件を特定し、フリーランスと合意のうえで支払期日を修正します。経理・財務部門との連携が必要です。
ステップ4|社内研修・相談窓口の整備(施行3か月前までに完了)
発注担当者向けの禁止行為・ハラスメント防止研修を実施し、相談窓口の設置・周知を完了させます。
ステップ5|運用開始・定期モニタリング(2026年7月1日以降)
施行後も定期的に取引条件・支払状況・相談件数を確認し、コンプライアンス体制を継続的に維持します。
まとめ|対応の遅れは経営リスクに直結する
フリーランス保護新法への対応は、単なる法令遵守にとどまらず、フリーランスとの信頼関係を築き、優秀な外部人材を継続的に確保するための経営戦略でもあります。
特に、Web制作・デザイン・ITエンジニアリング・コンテンツ制作など、フリーランス人材への依存度が高い業種・業態では、早期対応が競合他社との差別化にもつながります。
「何から手をつければよいかわからない」「自社の契約書が法律要件を満たしているか不安」という担当者の方は、専門家への相談を早期に行うことを強くお勧めします。
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