- 採用ターゲットは経営者が言語化する
- 採用媒体は情報でなく発信として設計
- 入社後3ヶ月まで受け入れを設計する
「求人を出しても応募が来ない」「やっと採れた人がすぐ辞める」――こうした状況を市場の問題や運のせいにしているうちは、採用は改善しません。採用がうまくいかない本当の原因の多くは、経営者が決めるべきことを決めないまま、現場や採用担当者に丸投げしていることにあります。この記事では、よくある失敗の場面とその原因を整理し、採用を「経営設計の一部」として捉え直すための考え方をお伝えします。
失敗パターン①:「いい人を採ってきて」が最大のNG指示
採用の現場でもっとも多い失敗の起点は、採用担当者への丸投げです。経営者が「いい人を採ってきて」とだけ伝え、どんな人物が自社に必要なのかを定義しないまま求人活動がスタートするケースは珍しくありません。
よくある場面:製造業・従業員30名の会社の場合
ある地方の金属加工会社では、ベテラン職人の退職に伴い急きょ求人を出しました。採用担当(総務兼任)は「即戦力の技術者」という条件で求人票を作成しましたが、面接では「感じのいい人」を優先して採用。入社後3ヶ月で「思っていた仕事と違う」と退職されてしまいました。
原因は明確です。「即戦力の技術者」なのか「長期育成前提の未経験者」なのか、「どんな働き方を求めるのか」を経営者が決めていなかった。採用担当者も判断軸を持てず、「なんとなく印象の良い人」を選ぶしかなかったのです。
判断の分かれ目①:「採用ターゲット」を経営者自身が言語化しているか
- 即戦力なのか、育成前提なのかを先に決める
- どんな経験・価値観を持つ人と働きたいかを、自分の言葉で説明できるか確認する
- 「どんな人でもいい」は採用担当者を迷わせる最悪の指示だと認識する
失敗パターン②:採用サイトも求人広告も「事務的な情報」しか書いていない
採用の入り口である求人広告や採用サイトが、給与・勤務時間・仕事内容の羅列だけになっていると、求職者は「他社と何が違うのか」を判断できません。
よくある場面:サービス業・従業員15名の会社の場合
ある介護サービス会社は、求人媒体に掲載を続けていましたが、応募数が伸び悩んでいました。掲載内容を確認すると、勤務時間・給与・休日の記載はあるものの、「なぜこの会社で働くのか」「どんなチームなのか」「経営者がどんな想いで事業をしているのか」が一切書かれていませんでした。
求職者は複数の求人を比較します。条件が似ていれば、「この会社で働くイメージが湧くかどうか」で選ぶ。つまり採用サイトや求人広告は、単なる情報掲載の場ではなく、自社を選んでもらうための発信の場です。
同社がその後、経営者のインタビューを採用サイトに掲載し、現場スタッフの日常を短い動画(採用動画)で伝えたところ、「この会社で働きたい」という意図のある応募が増えたという事例は、業界を問わず各所で報告されています。
判断の分かれ目②:自社の採用ページは「情報」か「発信」か
- 求人票を見た人が「この会社に話を聞きたい」と思う要素があるか確認する
- 経営者自身の言葉・考え方が、どこかに掲載されているか見直す
- 採用動画や写真など、雰囲気が伝わるビジュアルコンテンツがあるかチェックする
失敗パターン③:採用基準がなく、面接が「感覚」で終わっている
面接の場で経営者が直感だけで判断していると、採用のブレが大きくなり、入社後のミスマッチにつながります。
よくある場面:IT系受託開発・従業員20名の会社の場合
あるシステム開発会社では、技術的なスキルチェックは行うものの、仕事への姿勢や価値観を確認する質問がありませんでした。採用した人材がプロジェクトに入ってから「報告・連絡・相談ができない」「チームで動くのが苦手」と分かり、現場が混乱するケースが繰り返されていました。
根本的な原因は、「技術は採用基準にあるが、仕事観や行動特性の基準がない」ことです。面接で何を聞くか・何を確認するかを設計していなければ、どれだけ優秀な面接官でも見逃しが生まれます。
採用基準とは、スキルだけでなく「自社の文化や仕事の進め方に合うかどうか」を判断するための軸のことです。これを事前に決めておくことで、面接での質問が具体化され、複数の面接担当者が同じ基準で判断できるようになります。
判断の分かれ目③:採用基準は「スキル」と「価値観・行動特性」の両方を設計しているか
- 面接で必ず確認する質問を3〜5個、あらかじめ決めておく
- 「どう動くか」が分かるエピソードを引き出す質問を含める(例:「チームで困難があったとき、あなたはどう動きましたか?」)
- 合否の判断を担当者の感覚だけに委ねず、複数名で基準を共有する仕組みをつくる
失敗パターン④:採用後の「受け入れ設計」がなく、早期退職を繰り返す
採用がうまくいっても、入社後の受け入れが機能していなければ、せっかくの人材が短期間で離れてしまいます。
よくある場面:飲食業・従業員40名の会社の場合
ある飲食チェーンでは、採用コストをかけて店長候補を採用しても、3〜6ヶ月以内の退職が続いていました。退職者への聞き取りをすると、「最初の1ヶ月、誰に何を聞けばよいか分からなかった」「自分がどう評価されているか分からなかった」という声が多く挙がりました。
入社直後の期間(オンボーディング:新しい環境に慣れるための支援期間)を設計していない会社では、新入社員は「自分がここにいていいのか」「期待に応えられているのか」を測る手がかりを持てません。この不安が、早期離職につながります。
採用は「内定を出すまで」で終わりではありません。入社後3ヶ月をどう設計するかも、経営者が決めるべき採用設計の一部です。
- 入社初日〜1週間のスケジュールをあらかじめ決めておく
- 最初の30日・60日・90日で何を習得してほしいかを本人に伝える
- 定期的な1on1(週または隔週の個人面談)を仕組みとして組み込む
採用を経営設計として捉えるための3つのチェックポイント
ここまでの失敗パターンを踏まえ、採用を「設計」として機能させるために経営者が確認すべきポイントを整理します。
- 採用ターゲットを定義しているか:「どんな人が必要か」を経営者自身の言葉で説明できるか。即戦力か育成か、価値観・行動特性の優先順位はどこかを明文化する。
- 求職者に「選ぶ理由」を伝えられているか:採用サイト・求人広告・採用動画などを通じて、自社を選ぶ理由が伝わっているか。情報の羅列ではなく、働くイメージが伝わる発信になっているかを確認する。
- 採用後の受け入れまで設計しているか:内定から入社後3ヶ月の流れを設計し、新入社員が安心して力を発揮できる環境を準備できているか。採用コストは「採用してから辞めるまでの全期間」で回収されるものだと認識する。
まとめ:採用がうまくいかない理由は「設計の欠如」にある
採用の失敗を「市場が悪い」「いい人がいない」で片づけていると、同じ問題が繰り返されます。この記事でお伝えした要点は次の3つです。
- 採用ターゲットの定義は経営者の仕事:担当者に丸投げすると、判断軸のない採用が続く
- 採用サイト・求人広告・採用動画は「発信」として機能させる:事務的な情報だけでは、求職者の心は動かない
- 採用は内定ではなく入社後3ヶ月までが設計の範囲:受け入れ設計がなければ早期離職は防げない
採用を経営設計として捉え直すことで、応募の質が変わり、定着率が上がり、採用にかかるコストと時間を着実に減らすことができます。「どこから手をつければいいか分からない」という段階からでも、整理の仕方はあります。採用の設計や、採用サイト・採用動画・求人広告の見直しについて、お気軽にご相談ください。