- 伝え方は設計次第で再現できる
- ターゲットを1人に絞ると刺さる
- 言語化が採用改善の第一歩
「求人広告を出しても応募が来ない」「採用できても3ヶ月で辞めてしまう」——こうした悩みを抱える経営者・採用担当者に共通しているのは、待遇の問題ではなく「伝え方が設計されていない」という点です。人が集まる会社が意図的にやっていることは、派手なブランディングでも高額な広告費でもありません。伝える内容・順番・場所を仕組みとして整えているだけです。この記事では、その構造を順番に解説します。
なぜ「いい会社なのに人が来ない」が起きるのか
伝え方の問題は、発信量の少なさではなく「伝わる設計の欠如」から生まれる。
多くの中小企業は「うちは条件も悪くないし、職場環境もいいはずなのに」と感じています。それは多くの場合、事実です。しかし求職者の立場から見ると、その「いいはず」が一切見えていない。求人票に書いてある情報は、給与・勤務地・休日日数だけ。どんな人が働いていて、どんな仕事をしていて、どんな価値観で動いている会社なのかが、まったく伝わっていません。
情報があっても「届いていない」のと、情報そのものが「存在しない」のでは原因が違います。しかし採用がうまくいっていない会社の多くは、後者です。伝えるべき内容が言語化されておらず、発信できる状態になっていません。これは能力の問題ではなく、設計の問題です。
逆に言えば、設計さえ整えれば再現できる。「センスのある会社だけが得をする」構造ではないということです。
人が集まる会社の「伝え方」に共通する3つの構造
伝え方が機能している会社は、「誰に・何を・どの順番で」が一貫している。
① ターゲットの解像度が高い
「できるだけ多くの人に届けたい」という発想で書かれた求人や採用サイトは、結果としてどの人にも刺さりません。人が集まる会社は、想定する応募者像が具体的です。「転職回数が多くて自信をなくしている第二新卒」「子育てが一段落して再び働きたい30代後半の女性」「都市部の大手に疲れて地元に戻りたい20代」——ここまで絞り込んで書かれたメッセージは、その人に深く刺さります。
ターゲットを絞ると応募数が減るように感じますが、実際には逆です。「自分のことを言っている」と感じた人は、読むのをやめません。最後まで読んだ人は、会社への理解度が高い状態で応募してきます。結果として採用後のミスマッチが減り、定着率が上がります。
② 「何者か」が最初の30秒で分かる
採用サイトや会社紹介動画を開いて最初の30秒——ここで「どんな会社か」が伝わらなければ、ほとんどの求職者は離脱します。重要なのはビジュアルの格好よさではなく、「この会社が何を大切にしているか」が一言で言えるかどうかです。
よくある失敗は、トップページに「お客様に寄り添い、地域とともに成長する」といった汎用的なフレーズを置いてしまうことです。読んだ人の記憶にはほぼ残りません。代わりに機能するのは、具体的な仕事の姿や、社員の言葉で語られる「うちならではの話」です。採用動画の冒頭に「なぜこの仕事をしているか」を語る社員の言葉を置くだけで、伝わり方が大きく変わります。
③ 感情と論理が両方ある
「いい職場です」という感情訴求だけでは信用されません。「年間休日125日」という数字だけでは選ばれません。人が動くのは、感情と論理の両方が満たされたときです。
感情:この会社で働いたら、自分はどう感じるか、どう成長できるか
論理:具体的な仕事内容・待遇・働き方の条件
採用サイトや採用動画では、この2つを組み合わせることが重要です。感情を動かすストーリーで「興味」を持たせ、論理的な情報で「判断」させる。この順番が崩れると、どちらかが機能しません。
伝え方を「仕組み」にする5つのステップ
伝え方の設計は、一度つくれば繰り返し使える資産になる。
- 【言語化】自社の「らしさ」を箇条書きで30個出す
まず、社員が日常的に口にする言葉・価値観・行動のくせを、評価せずに書き出します。「丁寧すぎるくらい丁寧に確認する」「会議では必ず誰かが反論する」「新人でもお客様に同行する」——こういった具体的な行動レベルの言葉を30個。このリストから「うちらしさ」が浮かび上がってきます。
判断基準:「他の会社でも言えそうか」をチェックし、言えないものを残す。 - 【絞り込み】採用したい人物像を1人だけ描く
ペルソナ(想定する応募者像)を、できるだけ具体的に1人だけ設定します。年齢・職歴・現在の悩み・何を求めているか・何を不安に思っているか。「幅広く採りたい」という気持ちは分かりますが、伝え方の設計では一旦1人に絞ることで、メッセージの解像度が上がります。
判断基準:その1人が読んだとき「自分のことだ」と感じるかどうか。 - 【構造化】伝える順番を決める
①共感(あなたの悩みは分かる)→②信頼(私たちはこういう会社だ)→③証拠(こんな人が働いている)→④行動(まず話を聞いてみてください)。この順番を守るだけで、採用サイト・採用動画・求人広告のどれに使っても機能します。
判断基準:各ステップが欠けていないか確認する。 - 【制作】媒体ごとに「役割」を分ける
採用サイト・採用動画・求人広告は、それぞれ役割が違います。求人広告は「存在を知らせる入口」、採用サイトは「会社を深く知る場所」、採用動画は「感情を動かすコンテンツ」。同じ情報を全媒体に貼り付けるのではなく、求職者がたどる順番に合わせて役割を設計します。
判断基準:求職者が「次に何を知りたくなるか」を基準に媒体の役割を決める。 - 【検証と更新】「離脱」と「応募」の間を見る
採用サイトへのアクセスはあるのに応募がない場合、問題は「見つかっていない」ではなく「伝わっていない」です。どのページで離脱が多いかを確認し、そのページの伝え方を見直します。採用動画の視聴完了率が低い場合、冒頭の30秒に問題がある可能性が高い。
判断基準:採用できたときの「応募者がどこで知ったか・何が決め手か」を毎回記録する。
小さく始めるなら、ここから
完璧な採用サイトを一気につくろうとする前に、まず「言葉」を整えることから始める。
採用活動を一から設計し直すのは、時間も予算もかかると感じるかもしれません。しかし最初の一歩は、予算ゼロでもできます。それは「自社のらしさを言語化すること」です。
具体的には、次の3つの問いに答えを書いてみてください。
- うちの会社で長く活躍している人に共通することは何か
- 入社してよかったと言う人が挙げる理由は何か
- 逆に、合わなかった人が離れていく理由は何か
この3つの答えが揃うと、「どんな人に来てほしくて、どんな人には向かないか」が言葉になります。これが伝え方設計の土台です。採用サイトをリニューアルするのも、採用動画を制作するのも、会社紹介動画をつくるのも、この土台がなければどれも機能しません。逆に土台が整えば、どの媒体に展開しても同じメッセージが一貫して伝わる「仕組み」になります。
伝え方が整うと、採用以外にも変化が起きる
採用の伝え方を整えると、営業・顧客獲得にも同じ構造が使えるようになる。
「誰に・何を・どの順番で」という伝え方の設計は、採用専用のスキルではありません。採用で言語化した「自社のらしさ」は、そのまま営業資料・会社紹介動画・Webサイトのコピーに転用できます。採用が強い会社は、顧客への伝え方も整っていることが多い。これは偶然ではなく、同じ設計思想が両方に機能しているからです。
逆に言えば、採用に苦労している会社は、顧客への伝え方にも同じ課題を抱えていることが多い。採用の伝え方を改善することは、会社全体のコミュニケーション力を底上げする入口でもあります。
まとめ
- 人が集まる会社は、ターゲットの解像度・最初の30秒・感情と論理の組み合わせを設計している
- 伝え方は5ステップ(言語化→絞り込み→構造化→媒体設計→検証)で仕組みにできる
- まず「うちのらしさ」を言葉にするところから始めれば、予算ゼロでも第一歩は踏み出せる
「採用サイトをつくり直したいが何から始めればいいか分からない」「求人広告は出しているが応募の質が上がらない」「採用動画を検討しているが、どんな内容にすべきか」——こうした問いに、私たちは一緒に考えます。まずは現状の伝え方を整理するところからお手伝いできますので、お気軽にご相談ください。