- 2026年6月から時間外労働の上限規制(月45時間・年360時間)が中小企業にも完全適用され、違反には罰則が科される
- 月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が中小企業でも50%以上に引き上げられ、人件費の試算見直しが急務
- 勤怠記録の客観的把握・就業規則改訂・36協定の見直しを今から計画的に進めることが最大のリスクヘッジになる
2026年6月1日施行:改正労働基準法とは何が変わるのか
2026年6月1日、改正労働基準法がいよいよ施行されます。今回の改正は特に中小企業への影響が大きく、対応が遅れると罰則リスクや人材流出につながりかねません。「まだ時間がある」と思っているうちに、気づけば準備期間がほとんど残っていなかった、という事態を避けるため、本記事では改正の概要から具体的な実務対応まで、わかりやすく整理しました。
なお本記事は2025年6月時点の公開情報をもとに作成しています。最新の省令・通達については厚生労働省の公式発表をあわせてご確認ください。
改正労働基準法の主な変更点:5つのポイント
1. 時間外労働の上限規制が中小企業にも完全適用
これまで大企業には先行適用されていた時間外労働の上限規制(月45時間・年360時間、特別条項でも年720時間)が、2026年6月以降は業種・規模を問わず全事業者に完全適用されます。
特に注意が必要なのは、36協定を締結していても上限を超えた場合は罰則の対象となる点です。従来の「努力義務」から「強制力を持つ規制」へと性質が変わることを、経営層がしっかり認識する必要があります。
実務チェック:現在の36協定の内容を見直し、過去12か月の実績時間外労働時間と照合してください。上限を超えている月がないか確認が急務です。
2. 割増賃金率の引き上げ(月60時間超の時間外労働)
月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が、中小企業においても50%以上に引き上げられます。大企業ではすでに2023年4月から適用済みですが、猶予措置が終了し中小企業にも同水準が求められます。
たとえば月給30万円の社員が月70時間の時間外労働をした場合、60時間超の10時間分については従来より割増率が高い計算式が適用されます。人件費の試算を早急に見直すことが重要です。
3. 労働時間の把握義務の厳格化
「管理監督者」や「裁量労働制の対象者」についても、健康管理を目的とした労働時間の把握が義務化されます。タイムカードやPCログなど客観的な方法による記録が求められ、自己申告のみでは不十分とみなされるリスクがあります。
中小企業でよく見られる「だいたいこのくらい」という感覚的な管理は通用しなくなります。勤怠管理システムの導入・見直しを検討するタイミングです。
4. 年次有給休暇の取得促進義務の強化
年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、年5日の有給休暇を使用者が確実に取得させる義務はすでに施行済みですが、今回の改正ではその管理・記録義務がより厳格に運用されます。取得状況の記録を5年間保存することが明確化される見通しです。
「取得しなかったのは本人の意志」という言い訳は通じません。計画的付与や時季指定の活用を社内ルールとして整備しておきましょう。
5. 労働条件の明示ルールの変更
雇用契約締結時および契約更新時に明示すべき労働条件の項目が追加・変更されます。特に有期雇用労働者の更新上限や無期転換に関する情報提供が義務付けられる点は、パートやアルバイトを多く雇用する中小企業にとって見落としがちなポイントです。
既存の雇用契約書・労働条件通知書のひな形を今すぐ見直し、必要な記載項目が漏れていないか確認してください。
中小企業が今から取り組むべき実務対応ロードマップ
改正施行まで約1年という時間は、決して余裕があるわけではありません。以下のステップで計画的に準備を進めることを推奨します。
ステップ1:現状の労働時間実態を「見える化」する
まず過去1年分の時間外労働実績を部署・個人ごとに集計し、上限規制に抵触するリスクがある箇所を特定します。データがない場合は、勤怠管理ツールの導入から始めることが先決です。
ステップ2:36協定の内容を見直す
現行の36協定が改正後の上限規制に適合しているか確認します。特別条項を設けている場合はその発動要件・回数・時間数が適法かどうか、社会保険労務士などの専門家と確認しておくと安心です。
ステップ3:給与計算ルールと賃金台帳を整備する
割増賃金率変更に対応するため、給与計算ソフトの設定変更や手計算ルールの見直しが必要です。変更後の人件費インパクトを試算し、必要であれば価格転嫁や業務効率化の検討も視野に入れてください。
ステップ4:就業規則・雇用契約書を改訂する
変更内容を就業規則に反映し、労働者へ周知します。有期雇用契約のひな形も新しい明示ルールに沿って更新しましょう。就業規則の変更は従業員代表の意見聴取と労働基準監督署への届出が必要です。
ステップ5:管理職・現場リーダーへの研修を実施する
法改正の内容と自社のルール変更を管理職が正しく理解していなければ、現場レベルでの対応は期待できません。勉強会や研修を通じて、「なぜ変わるのか」という背景から丁寧に伝えることが定着への近道です。
罰則・リスクを正しく理解する
改正労働基準法に違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が事業主に科される可能性があります。しかしそれ以上に怖いのは、
- 労働基準監督署による是正勧告・指導
- 「ブラック企業」としての風評拡散とSNSへの投稿
- 求人への応募減少・優秀な人材の離職
- 取引先からの信頼失墜
といった間接的なダメージです。コンプライアンス対応は「コスト」ではなく、企業の持続的成長を支える「投資」と捉え直すことが、これからの経営には求められます。
専門家への相談・補助金活用も選択肢に
労働時間管理システムの導入費用や就業規則の改訂費用については、厚生労働省が提供する各種助成金(働き方改革推進支援助成金など)を活用できる場合があります。申請には条件や締め切りがあるため、早めに最寄りの労働局や社会保険労務士に相談することをお勧めします。
また、SOAではWebサイトを活用した採用強化・ブランディング支援も行っており、法改正対応と並行して「選ばれる会社づくり」をサポートしています。お気軽にご相談ください。
まとめ:2026年6月までに動き出すことが最大のリスクヘッジ
改正労働基準法の施行まで残り約1年。「うちは小さいから関係ない」「なんとかなるだろう」という姿勢が、最も危険な対応です。
重要なポイントを改めて整理します。
- 時間外労働の上限規制が中小企業にも完全適用される
- 月60時間超の割増賃金率が50%以上に引き上げられる
- 労働時間の把握は客観的記録が必須になる
- 有給休暇の管理・記録の保存義務が明確化される
- 雇用契約書・労働条件通知書の記載内容が変わる
今すぐ現状を把握し、専門家も巻き込みながら計画的に準備を進めてください。備えた企業だけが、法改正後も安心して事業を継続できます。