- 2026年7月6日施行の改正育児・介護休業法では、育休取得状況の公表義務が従業員300人超の企業に拡大され、3歳以上小学校就学前の子への柔軟な働き方整備が義務化される。
- 企業は就業規則の改訂・労基署届出・従業員への個別周知フロー・管理職研修を施行前に完了させる必要があり、「掲示のみ」の周知では法的要件を満たさない点に注意が必要。
- 介護に直面した従業員への個別案内・意向確認も義務化されるため、申し出があった際の標準対応フローをあらかじめ整備しておくことが介護離職防止と法令遵守の両立につながる。
2026年7月6日施行の改正育児・介護休業法とは
2026年7月6日(月)、改正育児・介護休業法が施行されます。この改正は、少子化対策・男性育休取得促進・介護離職防止を三本柱とする大規模な法改正であり、企業規模を問わずすべての事業主に対応が求められます。法施行まで時間的余裕が限られている今、実務担当者は改正内容を正確に把握し、就業規則・社内書類・従業員への周知体制を整えることが急務です。
本記事では、今回の改正における主要ポイントを整理したうえで、企業が実際に取り組むべき具体的な対応手順を解説します。
今回の改正育児・介護休業法 主要ポイント3点
①「育児休業取得状況の公表義務」対象企業の拡大
現行法では従業員数1,000人超の企業に育児休業取得状況の公表義務がありましたが、改正後は従業員数300人超の企業まで対象が拡大されます。公表が義務づけられる内容は「育児休業等の取得割合」または「育児休業等と育児目的休暇の取得割合」のいずれかです。300人超1,000人以下の規模の企業は、自社の数値を把握・集計する体制をあらかじめ整備しておく必要があります。
②子の年齢に応じた柔軟な働き方の整備義務
改正法では、3歳以上小学校就学前の子を育てる従業員を対象に、事業主がテレワーク・短時間勤務・フレックスタイム・始業終業時刻の繰り上げ下げ・保育施設の設置運営など複数の柔軟な働き方のメニューを用意し、そのなかから従業員が選択できる仕組みを整備することが努力義務から義務に格上げされます。単に制度を設けるだけでなく、従業員への個別周知と意向確認のプロセスも求められる点に注意が必要です。
③介護との両立支援措置の強化
家族の介護に直面する従業員への支援も強化されます。事業主は、従業員が介護に直面した旨を申し出た際に、個別に両立支援制度を案内し意向を確認することが義務づけられます。また、介護離職を防ぐための情報提供の充実が求められており、介護休業・介護短時間勤務・所定外労働の制限といった既存制度の周知方法を改めて見直す必要があります。
企業が対応すべき実務手順 ステップ別チェックリスト
ステップ1:改正内容の社内共有と担当部門の明確化
まず人事・総務部門のリーダーが改正全容を正確に把握し、経営層への報告と社内の役割分担を確定させましょう。外部の社会保険労務士や法律専門家とも早期に連携することで、解釈の誤りや対応漏れを防ぐことができます。
ステップ2:就業規則・育児介護休業規程の改訂
改正内容に合わせて就業規則本体および育児・介護休業規程を改訂します。改訂後は労働基準監督署への届出が必要です。10人以上の事業所では常時就業規則を届け出る義務があるため、施行前に余裕をもって手続きを完了させてください。規程改訂の際は、以下の点を盛り込んでいるか確認しましょう。
- 3歳以上小学校就学前の子に対応した柔軟な働き方の選択肢の明記
- 育児休業取得状況の公表方法・タイミングの定め(対象企業のみ)
- 介護直面時の個別案内・意向確認フローの明記
ステップ3:従業員への個別周知と意向確認の仕組み構築
改正法では、制度の周知を「全体向けの掲示」で完結させることはできません。個別の従業員に対して書面・電子メール等の方法で制度内容を案内し、利用意向を確認するプロセスが必要です。特に以下のタイミングでの個別対応フローを整備してください。
- 従業員が妊娠・出産を申し出た時点
- 子が3歳になる前の時点(柔軟な働き方の意向確認)
- 従業員が介護に直面した旨を申し出た時点
これらのフローを標準化しておくことで、担当者が変わっても対応漏れが生じない体制を作ることができます。
ステップ4:社内書式・申請様式の整備
育児休業申出書・介護休業申出書・意向確認記録シートなど、改正後の運用に対応した書式を準備します。電子申請・電子保存を導入している企業は、新規項目に対応したシステム改修も合わせて進めましょう。
ステップ5:管理職・ラインマネジャーへの研修
制度を整備しても、現場のマネジャーが正しく運用できなければ実効性は上がりません。特に「育児休業の取得を妨げる言動(マタハラ・パタハラ)の防止」「柔軟な働き方の選択肢の案内方法」「介護直面時の声かけと制度案内の手順」については管理職向け研修を実施し、理解度を確認することが重要です。
中小企業が陥りやすい対応漏れのポイント
従業員規模が小さい企業ほど、専任の人事担当者がおらず対応が後手に回りがちです。特に注意が必要な漏れポイントを確認してください。
- 就業規則の改訂届出を忘れる:改訂しても労基署未届けでは法的に無効となるリスクがあります。
- 「掲示だけ」で個別周知を省略する:改正法は個別案内を義務づけており、掲示・イントラ掲載だけでは不十分です。
- 300人超への拡大を把握していない:グループ会社合算や派遣・パートを含めた頭数を正確に把握し、自社が公表義務対象かを確認してください。
- 介護対応フローが未整備のまま:介護は突発的に発生するケースが多く、フローが未整備だと申し出を受けてから混乱しがちです。
改正法対応を機に、職場環境そのものを見直す視点
法改正への対応は「コンプライアンスの最低ライン」ですが、これを機に職場全体の働きやすさを底上げするチャンスでもあります。育児や介護と仕事を両立できる職場は、優秀な人材の定着率向上・採用競争力の強化にも直結します。就業規則の整備と並行して、管理職の意識改革・フレキシブルな勤務体制の拡充・職場コミュニケーションの改善にも目を向けてみてください。
育児・介護に限らず、多様な事情を抱える従業員が安心して働ける環境づくりは、企業の持続的成長を支える経営基盤となります。今回の法改正を単なる義務対応で終わらせず、自社の人事・労務マネジメント全体を見直す契機として活用してください。
まとめ:2026年7月6日施行に向けて、今から動き出す
改正育児・介護休業法の施行まで、時間的余裕は決して多くありません。就業規則改訂・労基署届出・従業員への個別周知フロー整備・管理職研修といった対応事項は、それぞれに準備時間が必要です。早期に着手することで、施行直前の混乱を防ぎ、法令違反リスクを回避することができます。
自社の対応状況に不安がある場合や、就業規則の改訂・人事制度の整備について専門的なサポートが必要な場合は、お気軽にご相談ください。