- 2026年7月13日施行の改正電子帳簿保存法では、電子取引データの検索要件に関する猶予規定が終了し、日付・金額・取引先の3要素による検索機能の完全整備が全企業に求められる
- スキャナ保存の適正事務処理要件が再整理されるほか、不正保存に対する罰則運用が強化されるため、「なんとなく」の運用では税務調査リスクが高まる
- 対応はシステム導入だけでなく社内規程整備・従業員教育・定期レビューの仕組み化まで含めた取り組みが必要であり、施行までの期間を逆算すると今すぐ着手することが不可欠
はじめに|2026年7月13日、何が変わるのか
2026年7月13日(月)、改正電子帳簿保存法の一部規定が新たに施行されます。電子帳簿保存法はこれまでも数度にわたる改正を経てきましたが、今回の改正は電子取引データの保存要件の厳格化とスキャナ保存の運用ルール見直しを中心に、企業の実務に直接影響を与える内容が含まれています。
「2022年の宥恕措置はクリアした」「2024年1月の完全義務化には対応済み」と安心している企業も少なくありませんが、2026年7月施行分はこれまでの対応では不十分なケースがある点に注意が必要です。特に中小企業においては、システム投資や社内ルール整備が追いついていない現場も多く、施行直前になって慌てるケースが後を絶ちません。
本記事では、2026年7月13日施行の改正内容を整理したうえで、企業が今すぐ着手すべき実務ステップと対応チェックリストをわかりやすく解説します。
電子帳簿保存法の基本構造をおさらい
対応策を検討する前に、電子帳簿保存法の全体像を改めて確認しておきましょう。同法は大きく以下の3区分で構成されています。
①電子帳簿等保存
会計ソフト等で作成した帳簿・決算書類を電子データのまま保存する区分です。任意適用であり、一定の要件を満たせば紙への出力保存が不要になります。優良な電子帳簿として認定されると、過少申告加算税の軽減措置も受けられます。
②スキャナ保存
紙で受領・作成した領収書や請求書などの書類をスキャンして電子データで保存する区分です。任意適用ですが、適用する場合は解像度・タイムスタンプ・ヴァージョン管理など所定の要件を満たす必要があります。
③電子取引データ保存
メールやクラウドサービスなど電子的手段で授受した取引情報(電子インボイス・PDFの請求書等)を電子データのまま保存する区分です。2024年1月1日以降は全企業に義務化されており、紙に印刷して保存することは原則認められなくなっています。
2026年7月13日施行|改正のポイントを整理する
今回の施行で特に企業実務に影響が大きいのは以下の3点です。
ポイント① 検索要件の見直しと実質的な厳格化
電子取引データ保存において、保存したデータを「日付・金額・取引先」の3要素で検索できることが要件とされています。2024年以降も一定の猶予的運用が認められていましたが、2026年7月13日以降は猶予規定が終了し、検索機能の完全整備が求められます。単純なフォルダ管理やファイル名規則だけでは要件を満たさないケースが増えるため、対応システムの選定・導入が急務です。
ポイント② スキャナ保存における適正事務処理要件の再整理
スキャナ保存に関しては、適正事務処理要件(定期検査・相互けん制等)の運用基準が見直されます。特に中小企業向けの簡易的な運用要件の適用条件が明確化されるため、これまで「なんとなく」運用していた企業は自社の体制が引き続き適法かどうかを再確認する必要があります。
ポイント③ 不正行為に対する罰則強化
改ざん・隠ぺいが認められた場合の重加算税の加重措置(通常の重加算税に10%加算)が引き続き適用されます。加えて、故意による不正保存に対する刑事罰規定の運用が強化される方向性が示されており、コンプライアンス対応の実効性が一層問われることになります。
中小企業が直面する3つの実務課題
法令の建付けを理解したうえで、実際の現場ではどのような壁にぶつかるのかを整理します。
課題① 「保存はしているが検索できない」問題
PDFで受け取った請求書をフォルダに放り込んでいるだけ、あるいはメールの添付ファイルを受信ボックスに残しているだけ、という運用は非常に多く見受けられます。これは保存はできていても法令が求める検索要件を満たしていないため、税務調査時に問題になる可能性があります。
課題② 「担当者しか知らない」属人化リスク
経理担当者が自分のルールでファイル名を付けて管理しているケースでは、担当者が退職・異動した途端に運用が崩壊します。法令対応は個人の工夫ではなく組織のルールとシステムとして整備することが不可欠です。
課題③ システム投資の優先順位がつけられない
「クラウド会計を導入すれば対応できる」「電子帳簿保存法対応ツールを買えばいい」と思っていても、自社の取引形態・業務フロー・既存システムとの連携を考慮しないまま導入すると、結果的に二重管理になって現場が混乱します。自社の業務プロセスを可視化したうえでツールを選ぶ順序が重要です。
今すぐ使える|対応チェックリスト12項目
以下のチェックリストを活用して、自社の対応状況を確認してください。
【電子取引データ保存】
- ✅ 電子的に受領した請求書・領収書・契約書等を特定できているか
- ✅ 受領データをシステム上に保存し、削除・上書きができない設定になっているか
- ✅ 「日付」「金額」「取引先名」の3要素で検索できる環境が整っているか
- ✅ 検索結果をダウンロード・提示できる運用フローが定まっているか
- ✅ 保存場所・保存期間・担当者を明文化した社内規程が存在するか
【スキャナ保存(任意適用企業向け)】
- ✅ スキャン解像度(200dpi以上)・カラー要件を満たしているか
- ✅ タイムスタンプの付与またはクラウドへの即時保存ができているか
- ✅ 定期検査・相互けん制の運用記録が残っているか
- ✅ 原本廃棄のルールと保管場所が明確になっているか
【全体的なガバナンス】
- ✅ 経理部門だけでなく、営業・購買など取引書類を扱う部門にも周知されているか
- ✅ 担当者が不在でも運用が継続できる手順書が整備されているか
- ✅ 直近1年間の運用を振り返り、未対応・グレーな書類が残っていないか確認したか
対応を進めるための実務ステップ
チェックリストで現状を把握したら、以下のステップで対応を進めましょう。
ステップ1|取引データの棚卸し(今すぐ)
自社でやり取りしている電子取引の種類を洗い出します。メール添付のPDF、EDI、クラウドサービス経由の請求書、ECサイトの購入明細など、取引チャネルごとにデータの所在と保存状況を一覧化することが出発点です。
ステップ2|ギャップ分析と優先課題の特定(1〜2か月以内)
棚卸し結果を法令要件と照らし合わせ、未対応箇所を特定します。このとき、リスクの大きさ(取引件数・金額規模・税務調査リスク)と対応の難易度を軸に優先順位をつけることが重要です。全部を一度に完璧にしようとすると動けなくなるため、まずは「検索要件を満たしていない電子取引データ」の対応から着手するケースが多いです。
ステップ3|ツール・システムの選定と導入(2〜4か月)
自社の業務フローに合ったシステムを選定します。クラウド会計ソフト、文書管理システム、電子帳簿保存法対応の専用ツールなど選択肢は多岐にわたります。重要なのは「法令対応」と「業務効率化」を両立できるかという視点です。既存のERPや販売管理システムとの連携可否も必ず確認してください。
ステップ4|社内規程の整備と従業員教育(同時並行)
システムを導入しても、使う人が正しく運用しなければ意味がありません。電子取引に関する社内規程を文書化し、関係部門への教育・周知を徹底します。特に営業・調達部門は取引書類を最初に受け取る立場にあるため、経理部門と連携した運用設計が欠かせません。
ステップ5|運用テストと定期レビューの仕組み化(施行前までに完了)
2026年7月13日の施行に向けて、本番運用前に必ずテストを実施します。税務調査を想定して「任意の日付・取引先・金額で検索し、データを即座に提示できるか」を実際に試してみてください。また、年1回以上の内部チェックを定例化し、運用が形骸化しない仕組みを作ることが長期的な対応の鍵です。
SOAが考える「法令対応」の本質的な価値
電子帳簿保存法への対応は、単なる義務履行にとどまりません。適切に対応することで得られる副次的な効果があります。
第一に、バックオフィス業務の生産性向上です。紙の書類をファイリング・保管・廃棄するコストは見えにくいですが、企業規模によっては年間で相当な工数が発生しています。電子保存が適切に機能すれば、書類の検索・確認・共有が劇的にスピードアップします。
第二に、データを経営判断に活かす基盤構築です。取引データが構造化されて蓄積されると、キャッシュフローの可視化・支払サイクルの最適化・取引先分析といった高付加価値な活用への道が開けます。法令対応を「コスト」と捉えるのではなく、デジタルデータ基盤への投資として位置づけることが、DX推進においても有効な考え方です。
第三に、取引先からの信頼性向上です。インボイス制度と電子帳簿保存法への対応が整っている企業は、取引先の経理担当者から見て「安心して取引できる相手」という評価につながります。特にBtoB取引では、こうした管理体制の差が契約・継続に影響するケースも増えています。
まとめ|2026年7月13日まで時間は限られている
2026年7月13日施行の改正電子帳簿保存法は、多くの中小企業にとって「まだ先の話」と思われがちですが、システム導入・社内規程整備・従業員教育を含めた対応期間を逆算すると、今この瞬間から動き始める必要があります。
特に以下の企業は早急な対応が求められます。
- 電子取引データをフォルダやメールボックスで管理しているだけの企業
- スキャナ保存を「なんとなく」運用しており、要件充足に自信がない企業
- 経理担当者以外に法令対応の知識がなく、属人化している企業
- 会計システムを長年更新しておらず、電子帳簿保存法対応機能がない企業
本記事のチェックリストと実務ステップを出発点として、貴社の対応状況を今すぐ確認してみてください。
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