- フリーランス保護新法は2026年6月28日に完全施行。従業員を1人でも雇用する企業はすべて「特定業務委託事業者」として義務を負う。
- 発注時の書面明示・60日以内の報酬支払・受領拒否や減額など禁止行為7類型の遵守・30日前契約解除予告が主な義務。違反には罰則あり。
- 今すぐ取引実態の棚卸しから着手し、契約書整備→社内規程改定→関係部署研修を施行前までに段階的に完了させることが企業リスク回避の鍵。
フリーランス保護新法とは?2026年6月28日に何が起きるのか
2024年11月に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称フリーランス保護新法は、フリーランス(個人として業務委託を受ける事業者)を取引上の不利益から守ることを目的とした法律です。施行から1年半の経過措置期間を経て、2026年6月28日に完全施行を迎えます。
これまでフリーランスとの取引は、下請法の適用外になるケースも多く、口頭発注・報酬の一方的な減額・突然の契約打ち切りといった問題が後を絶ちませんでした。新法はこうした慣行に対し、発注企業(特定業務委託事業者)に具体的な義務と罰則を課すことで是正を図ります。
フリーランスへの発注が1件でもある企業であれば、規模の大小を問わず対応が必要です。「うちは中小企業だから関係ない」は通用しません。この記事では、企業担当者が今すぐ確認すべき7つのポイントを整理します。
ポイント1:「特定受託事業者」の定義を正確に把握する
新法が保護の対象とする特定受託事業者とは、「業務委託の相手方である個人または従業員を使用しない法人」です。つまり一人法人(役員のみで従業員ゼロの会社)も対象に含まれます。
一方、発注側(義務を負う側)は特定業務委託事業者と呼ばれ、「従業員を使用する個人事業主または法人」が該当します。パート・アルバイト・派遣社員を1人でも雇用していれば、この定義に含まれる点に注意が必要です。
まず自社が「特定業務委託事業者」に該当するかを確認し、フリーランスへの発注実態をリストアップするところから対応を始めましょう。
ポイント2:書面(または電磁的方法)による発注明示が義務化される
新法の中核となる義務が発注時の書面明示です。業務委託を行う際には、以下の事項を書面またはメール・PDF等の電磁的方法で明示しなければなりません。
- 業務委託の内容
- 報酬の額
- 支払期日
- 発注事業者・受託者双方の名称・住所
- 業務委託をした日
- 給付を受領する日または役務提供を受ける期間
口頭やチャットツールだけで発注を完結させる慣行は法令違反になりかねません。発注フローそのものを見直し、書面フォーマットを整備することが急務です。
ポイント3:報酬の支払期日は「受領後60日以内」が上限
発注企業が成果物や役務を受け取った日から起算して、60日以内に報酬を支払うことが義務付けられます。支払サイトが長い企業は、社内の経理フローや支払規定を早急に見直す必要があります。
また、受領後60日以内であっても、支払期日を明示しない契約は認められません。契約書・注文書に必ず支払期日を明記してください。
ポイント4:禁止行為7類型を全社で共有する
継続的業務委託(6か月以上の取引)を行う場合、以下の行為が明示的に禁止されます。違反した場合は公正取引委員会・厚生労働省による指導・勧告・命令の対象となり、最終的には50万円以下の罰金が科される可能性があります。
- 受領拒否(正当な理由のない成果物の受け取り拒否)
- 報酬の減額(合意なき一方的な値下げ)
- 返品(正当な理由のない成果物の返却)
- 買いたたき(著しく低い報酬額の設定)
- 購入・利用強制(自社商品・サービスの押し付け)
- 不当な経済上の利益の提供要請(協賛金・手伝いの強要など)
- 不当な給付内容の変更・やり直し要請
これらは担当者個人の問題ではなく、組織として管理・教育する仕組みが求められます。営業・購買・外注管理など発注に関わる部署への研修実施を検討してください。
ポイント5:育児介護への配慮義務と就業環境整備義務
新法は取引条件だけでなく、フリーランスの就業環境にまで発注企業の義務を広げています。
具体的には次の2点が求められます。
- 育児・介護への配慮義務:フリーランスが育児や介護と業務を両立できるよう、申し出があった場合に必要な配慮を行うこと
- ハラスメント対策義務:フリーランスへのセクシュアルハラスメント・パワーハラスメント等を防止するための体制整備
社内のハラスメント相談窓口をフリーランスにも開放するか、外部委託先を含めたハラスメントポリシーを見直すことが実務上のポイントです。
ポイント6:契約解除・更新拒絶には30日前予告が必要
継続的業務委託(6か月以上)を中途解除または更新しない場合、発注企業は少なくとも30日前までに予告しなければなりません。
また、フリーランス側から解除理由の開示を求められた場合は、遅滞なく理由を示す義務があります。「合わなかったから」「予算がなくなったから」といった曖昧な説明では不十分です。
プロジェクト型の外注契約が多い企業では、契約期間の設定と更新手続きを見直す絶好の機会です。自動更新条項の有無、更新タイミングの管理フローを整備しておきましょう。
ポイント7:今から着手すべき社内対応ロードマップ
2026年6月28日まで1年を切っています。経過措置期間中に完了させるべき対応を優先度順に整理します。
Step 1:取引実態の棚卸し(すぐに着手)
社内の全部署を横断して、フリーランスへの発注件数・金額・契約期間を一覧化します。特に「口頭発注のみ」「支払サイトが60日超」「長期継続取引」に該当するケースを優先的に抽出してください。
Step 2:契約書・発注書フォーマットの整備(3か月以内)
法定記載事項を網羅した発注書テンプレートを作成し、全部署で統一運用できる体制を整えます。既存の継続契約については、更新タイミングで法令対応版に切り替える計画を立てましょう。
Step 3:社内規程・ポリシーの改定(6か月以内)
外注管理規程・ハラスメント防止ポリシーを改定し、フリーランスとの取引に適用されることを明記します。相談窓口の案内をフリーランスにも周知する方法を決めておきましょう。
Step 4:関係部署への教育・研修(施行前までに完了)
営業・経理・人事・法務など発注に関わる全部署を対象に、新法の要点と禁止行為を周知する研修を実施します。特に現場担当者が無意識に行いがちな「値下げ交渉」「急な仕様変更」が禁止行為に該当しうることを具体的に伝えることが重要です。
まとめ:フリーランス保護新法は「取引の質」を問う法律
フリーランス保護新法は単なる手続き法ではなく、発注企業とフリーランスの関係性そのものを問い直す法律です。義務を果たすことはコンプライアンスの最低ラインであり、適切な取引環境を整えることが優秀なフリーランス人材との長期的な協働につながります。
2026年6月28日の完全施行に向けて、今から段階的に対応を進めることが、企業リスクの最小化と競争力の維持につながります。「まだ時間がある」ではなく、今が着手のベストタイミングです。
フリーランス法対応でお困りの方はご相談ください
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