- URL変更時はリダイレクト設定が必須
- 削除ページはデータで判断する
- 広告の遷移先変更は段階的に
「リニューアルしたばかりなのに、問い合わせが減った」「採用サイトを新しくしたら応募が止まった」——こういった相談は、Web制作の現場でとくに多いケースのひとつです。原因の大半は、デザインの善し悪しではなく、情報設計と移行作業の抜け漏れにあります。この記事では「よくある失敗→原因→改善後」の流れで3つの場面を取り上げ、自社のリニューアルに当てはめられる判断の分かれ目を示します。
なぜリニューアル直後に成果が落ちるのか
リニューアル後に成果が落ちる根本理由は、「新しいサイトを作る」ことと「今の成果を引き継ぐ」ことを、別のタスクとして扱ってしまうからです。
Webサイトは公開した瞬間から、検索エンジンに評価されながら運用が始まります。旧サイトが積み上げてきた検索順位・ページの信頼度・ユーザーの行動データは、制作会社に丸投げしたままでは引き継がれません。「きれいになった=成果が出る」という思い込みが、最初の落とし穴です。
失敗事例①:URL変更でSEO評価がゼロリセット
検索順位(Googleなどが決めるページの表示の順番)が一夜にして消える原因として、もっとも多いのがページURLの変更です。
どんな状況で起きるか
従業員30名ほどの製造業の会社が、10年ぶりにサイトをフルリニューアルした例を考えてみましょう。旧サイトは古いシステムで作られており、URLに日本語や数字の羅列が含まれていました。新サイトでは英語の分かりやすいURLに整理し直したところ、リニューアル翌月から問い合わせが半減。調べてみると、旧URLで上位に表示されていた製品ページが、検索結果から完全に姿を消していました。
原因
URLが変わると、検索エンジンは「別のページ」と認識します。旧ページに蓄積されていた評価は新URLに自動的に引き継がれません。この経路を正しく引き継ぐ設定が「リダイレクト」(旧住所から新住所への転送)ですが、設定が漏れていたり、転送先を間違えたりするケースが後を絶ちません。
改善後の対策
リニューアル前に旧サイトのURLを全件書き出し、新URLとの対応表を作成します。そのうえで「301リダイレクト」(恒久的な転送を意味する設定)を漏れなく実装し、公開後にGoogleのサーチコンソール(検索結果の管理ツール)でエラーが出ていないかを確認します。この作業は制作会社任せにせず、発注側でもチェックリストを持っておくことが重要です。
失敗事例②:採用サイトのリニューアルで応募が止まった
採用サイトのリニューアルで「ページが綺麗になったのに応募者が減った」という事態は、情報の削りすぎが主な原因です。
どんな状況で起きるか
社員数50名ほどのサービス業の会社が、採用サイトをリニューアルした場面を想像してください。デザイン会社から「情報を絞ってスッキリさせましょう」と提案を受け、旧サイトにあった社員インタビュー・職種別の仕事内容・よくある質問のページを削除しました。見た目は洗練されましたが、応募数は月単位で下がり続けました。
原因
求職者が採用サイトに求める情報は「この会社で自分はどう働くのか」という具体的なイメージです。社員インタビューや職種詳細は、「雰囲気が良さそう」という感覚を「ここなら働けそう」という確信に変えるコンテンツです。ページを削ることは、検索流入の入口を減らすだけでなく、応募の意思決定に必要な材料を取り上げることでもあります。
改善後の対策
リニューアル前に、どのページから応募が発生していたかをアクセス解析(サイトの利用状況を記録するデータ)で確認します。流入が多いページ・応募直前に見られているページは、デザインが古くても削除せず、新サイトに移行するのが鉄則です。「スッキリさせる」という方向性自体は間違いではありませんが、削る対象を感覚ではなくデータで判断することが求められます。
失敗事例③:広告の遷移先を変えて費用対効果が崩れた
リスティング広告(検索結果に表示される有料の広告)やSNS広告の遷移先URLをリニューアル時に変更すると、広告の学習データがリセットされ、成果が急落することがあります。
どんな状況で起きるか
従業員20名ほどの士業・コンサル系の事務所が、コーポレートサイトのリニューアルと同時に広告の遷移先を旧サイトから新サイトに変更した例です。旧サイトの問い合わせページへのリダイレクトも設定しましたが、広告経由の問い合わせ数はリニューアル直後から約2か月間、明らかに低い水準が続きました。
原因
広告配信システムは、どんなユーザーが広告をクリックして成果(問い合わせ・資料請求など)につながったかを学習しています。遷移先URLが変わると、その学習データが引き継がれず、広告が「どんな人に届ければいいか」を再び学び直す期間が生じます。この期間を「学習期間」と呼び、成果が不安定になるのは仕様上避けられない面があります。
改善後の対策
リニューアルのタイミングと広告の遷移先変更を同時に行わないことが、もっとも簡単な対策です。リダイレクトで旧URLを引き継いだまま運用を続け、新サイトの広告成果が安定してから切り替えるという段階的な移行が有効です。また、広告代理店や運用担当者にリニューアルの日程を事前に共有し、学習期間中の予算調整や入札戦略の変更を事前に合意しておくことも重要です。
リニューアル前に確認すべき「判断の分かれ目」3つ
以下の3点を確認するだけで、リニューアル後の成果低下リスクを大きく減らせます。
- URLは変わるか? 変わる場合は全ページ分のリダイレクト設定を計画に組み込む。制作会社に「リダイレクト対応は含まれていますか?」と事前に確認することが必須です。
- 削除するページに流入・成果はあるか? アクセス解析で月間100以上のセッション(訪問数)があるページ、または問い合わせ・応募に直結しているページは削除しない。削る前にデータを確認する習慣をつけましょう。
- 広告の遷移先を変えるタイミングは適切か? 採用活動の繁忙期・商品の販売ピーク時期とリニューアルを重ねない。広告運用の担当者が社外にいる場合は、リニューアルの1か月前には情報共有を行うのが目安です。
まとめ
サイトリニューアルで成果が落ちる原因と、その対策を整理します。
- URLを変えたらリダイレクト設定が必須 旧ページに積み上げてきた検索評価を引き継ぐには、全ページの転送設定を漏れなく実装し、公開後にエラーを確認する。
- 削るページはデータで判断する 流入や応募・問い合わせの発生源になっているページを感覚で削除しない。採用サイトでは社員インタビューや職種詳細が応募の意思決定に直結している。
- 広告の遷移先変更はリニューアルと切り離して考える 広告配信システムの学習データはURLが変わるとリセットされる。段階的に移行し、運用担当者と事前に情報共有しておく。
リニューアルは「見た目を刷新するプロジェクト」ではなく、「今の成果を守りながら次のステップに進むプロジェクト」です。設計の段階で成果への影響を洗い出しておくかどうかで、公開後の結果は大きく変わります。
「次のリニューアルで同じ失敗を繰り返したくない」「採用サイトや企業サイトの設計をどこから見直せばいいか分からない」という場合は、現状のサイトを一緒に確認するところから始められます。お気軽にご相談ください。